ooyamasay

詩をただ載せていきます

2022-06-01から1ヶ月間の記事一覧

夜ふかし

夜ふかし 紫陽花を焦がしたのは君のせい その冷たい澄んだ煙だけが 残るようになった時期に 鋭角からみえる夜 ページのはざまから跳ねるイルカ かわいいね 彼女はホルマリンに落ちて 走る途中だったみたい かっこよかった 窓から宇宙色のかき氷 下から濃いシ…

バター

バター 表紙を開いて 一ページ、めくったら もう戻れないね きみは他人を知って とわに温かさが つきまとうことになるさ どっちにしろさみしいよ 愛しくても、憎くても どれだけいとしくても そのひとがぼくだけのものになることはないし どれだけにくくても…

えくぼ

えくぼ 持て余す微熱の温度 ただ鈍い磁力に任せて 触れるしかできない ここにはわたしときみだけ 瞳にははちみつの重み 口元には天使の手のひら きみだけのもの でもわたしたちは溶けあえない 永遠に0mmが離れてる 雑音も気管にあるビー玉から ずっとふるえ…

雨の日に

雨の日に 緑の小さなビー玉を飲みこんだ 気管の終わりで止まったあと くもりの空を見ていたら 溶けてなくなっていった レモンの酸っぱさが喉を通りすぎて横に広がる 切ない色のカーディガンを わたしが寝ている間にかけてくれた あの人はもういない 蛇口の締…

Fall

Fall すももをしぼって蜜を 夕空にかけていちめん 瞬く魔だけ焦がしたみたいに 生き生きとした色 だけど確実に冷めてきた焔 君のきれいな指先が、落陽色の実をにぎったとき 世界にすずしいさみしい蜜を垂らした 見えぬ底に広がって 誰かの鼻をかすめる夜長に…

満月

満月 君の頬をなでると そこからぽろぽろと真珠 どうしたの もう聴こえない声 冷たくなった顔のそばに もろい珠の山 閉じたまぶたとふせたまつげが ものいいたげに 月の色を問われて あわてる私を鎮める あらがえない事実を 私の心に照らしつけたあなたを 白…

灰色

灰色 白いぶどうをクシャっとつぶして それが乾いてたんだって ずっと川の音が鳴り止まない夜に 夕日が沈んだのは五百年も昔のこと それ以来わたしの心臓の裏、背中の裏には焦げた跡があります どろどろ、じゅくじゅく小さな爆発をしながら やっと沸騰が収ま…

24.7℃

24.7℃ 彼女が上あごをゆっくりと開いて 流れこんできたのは黒い煙 あまりにも濃いからつやが出ていた はじめて血ではないものを吐いた こんなに濁ったものが体内にあったのかと うれしくてほほ笑んでみたら 目からもにじみ出るように黒い煙 指をくぐらせると…