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詩をただ載せていきます

昨日の歌/大山星

昨日の歌/大山星

 

生ぬるい雨の香りを

「過去の匂い」って言い切った君が

あまりにも乱暴で 希望に満ち溢れていて

おどろいた

 

昨日よりいくらか暖かいこんな日は

血がシャンパンみたいに騒いで

歌わずにはいられなかった

(サングリアじゃないの?って

君に突っ込まれたの、めんどくさかったよ)


こんな浮き足立った日は

どうしても手に入れたかったあの人も

どうでもよくなった


いつまでも、人との埋まらない距離を

楽しみたい 自分の心のスペースだと言って

こっそりだいじにしたい


炭酸の泡が下から上ってはじけるまでの

短いこの人生

いくつになっても大人ぶっていたい

かわいい私とさわやかな君で

悲しみの奴隷/大山星

悲しみの奴隷/大山星

 

あらゆることに糸を伸ばした私の心の巣は

ささいなことでふるえる

 

 

あのときあなたと私が交換した、

ポイントカードだけではなくて

ただの波打った空気や

決してきれいに澄んではいない視線でさえ

あなたと私を結びつける


どうかさっき日付けが変わる前の

人身事故で亡くなったのが

あの日私のレジで買い物をした

あなたでありませんように

私の知らない人も含めて

誰でもありませんように

心安らかに眠れますように

そして、いつか私もあなたほどの勇気と

思いやりを持った人になれますように

 


駅員のアナウンス、集う人々の頭、

もれ聞こえるため息と悪態

すべて私の頭の上を通り過ぎて

ただふるえる糸を見つめるしかできなかった

不規則に小刻みに激しくふるえてその糸は

雨露に濡れてやっと重くなりしだいに

エネルギーを奪われて沈黙した

 


黒く澱んだ空気がもたれて

私たちが息をするのと同じくらい無意識に

酸素は奪われて

気づいたらろうそくの火は小さくなっていた

たまたまふっと風が吹いて空気が流れただけで

もうその火は消えてしまうような世界になった

溶け残った、わずかなろうのかたまりに

祈りをささげるようなことは、

私にはできないけれど

ただ乾いたそれをなで、ああと息を洩らし

小さな花を添えながら

あなたの心の平穏を願うしか

私にはできないのだった、

恋2/大山星

恋2/大山星


この気持ちに意味はないです

だれかが通りすがり、いたずらに火をつけていっただけで


この熱が雪を溶かし寒さを和らげることもなければ

花を咲かせ服を乾かすこともない

ただ焦げて私の体が頑張ってしまい、

生き急ぐだけ


だから何の価値もないです

エネルギーの無駄


もちろん君を幸せにする力もない

脈略もなく生まれたぬるい気持ち

でも素手で揉み消せるほど冷えてない

いっそ焦がしきってくれたらいいのに

恋人/大山星

恋人/大山星


君の心臓に 赤い糸を縫い付けている

私のことを 忘れられないように


一緒に行ったお店 歩いた道

買ったアクセサリー おすすめした曲

腰につけてた香水 飲んだお酒


一針一針 丁寧に作りました

私の跡が消えない心臓を


別れて糸を切ったあとも

穴は開いたまま

ふさがらないんじゃない?

それでいいのだけど


そこから血が流れたら滑稽だなとは思います

滝みたいで美しいかな?

そうはならないかもしれませんが。

「さようなら」/大山星

「さようなら」/大山星


言った後に

私が突然いなくなれば

このさようならは

とても美しいものになるのに


吹きけしたろうそく

捨てられないみたい


一度は思い返される言葉になるのに

ああ、私が生きているせいで

ささいな一言にすぎないなんて

忘れられる日常のワンシーンなんて

かわいそうなさようなら

レモン一枚/大山星

レモン一枚/大山星


目の厚さと 顔のほくろの位置が

君と一緒だったあの子を好きになった


まだあの子は私のことを知らないけれど

近づいてはいけないと思った

 

 

君に残した跡を

彼女にも負わせることはできない


ましてや世間的には「少数派な」思いを

明かしてはいけないと思った


そもそも 君の面影を好きになってる

ようなものかもしれないし


苦い とても苦い

 

 

でも だめだった

同じクラスで同じ部活だったから

それだけを言い訳に

でもなるべく距離は取った

でも

 


好きだった

向こうもそう言った

ある時にはレモンが一枚

入るくらいの距離だった

でもそれでおしまいにした


でも その分忘れられなくなって

苦い とても苦い

 


時間が経った今も

今ではレモン一枚分の苦しさ

燃える羽/大山星

燃える羽/大山星


まぶたをあげて 羽を奮い立たせるわ

だれかにゆるされないわたしのいのち

きらめくなみだが 美しく冷たいジュエリー

数だけ見ればとんだお金持ち

私の傷が 血が 透けてみえ

さらに色とりどりの輝きへ


かわいそうなあの人には

まぶたをかるくふせ 羽をすり寄せて

ほほえみをあげるの

社会にゆるされないわたしたちのいのち

涙がながれた跡の道も、

結晶がきらめいてさらにかがやくからさ


自分の羽を燃やしきる勇気はなかったの 

火をつけたことはあったけれど

だからきみにすり寄ったのも気まぐれとエゴ たまたま目についたからぬくもりをあげて

地獄に引き戻した 

君の人生に小さな生きがいすら

もたらす力もないのに

すすけてこげくさいのに

ゆるして