24.7℃
彼女が上あごをゆっくりと開いて
流れこんできたのは黒い煙
あまりにも濃いからつやが出ていた
はじめて血ではないものを吐いた
こんなに濁ったものが体内にあったのかと
うれしくてほほ笑んでみたら
目からもにじみ出るように黒い煙
指をくぐらせるとインクみたいに垂れたけど
誰かに見せたら血だって言われた
がっかりした
だから皮膚の下で花瓶を割っておいた
白い欠片が粉々になっているのがちょうどいい
手にまとわりついてた絵の具も
やっぱり血の匂いはしないから
百合を一輪もって飾っておいた
※この詩は2021年度金澤詩人賞の公募に出したものです。