ooyamasay

詩をただ載せていきます

間々/大山星

間々/大山星


静けさの中で

垂れる滴さ

 

 

depth  絶望の音、

光はあるはずだと

思いこまなければならないときの


あるはずだと思えばたえられるって

光を見たことないわたしは思わない

 


ぴちょん、ぴちゅん

洞窟の中あるいて

違う暗闇に向かっていただけ


音の響いた間でわかる

これは別の深い穴に

来ただけなのだ

どちらが光に近いかも、はたして分からない

ずっと

 


ずうっと

 


地獄だなんて

そんなキャッチーな人気ものじゃないわ

名も無い

ただの空間

息だけ

歩くだけ

できるから

 

 

ぶつかったらおわりそう

でも空間を生み出す壁ということ

壁の形が見えたということ


そうしてぶつかることを繰り返し

また別の間へ歩いて行く


力尽きたところが

私の墓場、ということ。

 

 

滴を垂らした人の

なんと空しいことよ

自分のものか誰のものかも

分からない

あたま、いたい/大山星

あたま、いたい/大山星

 

ザラザラザリ…ガリガリガガガ…

 


あれは 教科書で見覚えのある

誰かの尾骨

頭の上を通り過ぎてゆく


痛む頭をなでるかのように


行ってしまった


たしか骨の周りは透けていて

夜の群青でした

必死の証言むなしく


「ただの夢」で片付けられる

でも夢ならこんなに覚えているはずがない


触れられた違和感 鳴り響く音

骨と骨がぶつかる間に 飲んだ息の 乾いた味も


これは確かに終わらない地獄

夢でいいのだけど。

涙って/大山星

涙って/大山星


シャワー 愛のつぶつぶ

さまざまな きらめきを

あびて うるおすはその


はだ? いいえ、まなこ

それだけ? いえ、心も


黒い影と見まごうほどの

なめらかな球体のうえを

走る無数のしずくが輝く


それを持った指に滴る水

一粒一粒が集まって一滴


手首を滑っては君の元へ

それが持つ苦い冷たさで

僕の心を心配してほしい

お月見のうた/大山星

お月見のうた/大山星


歩きながら夜空を見上げて

無邪気に「月が綺麗だね」って

言えなかった私たちへ


たぶんあれは確か

去年の今頃

少し肌寒くて

金木犀の香りをまとった空気が

鼻をくすぐる季節のある日


夜の街の明るさにも

まけないくらい輝いてた

言葉にするべきあの月を

たしかに一緒に見たのに

二人して黙ったあの数秒


あれから色々あって、

と言いたいところだけど

むしろ何もなくて

世界中の人々は

一定の距離を保つようになったけど

それがなかったとしてもきっと

律儀に引かれた線を超えないままのこの関係


私は他のこと考えてぼーっとして

君はそんな私見てとまどって

結局変わんない、今でも。

私は月を見たら

君を思い出すようになったけど

それくらいしか変化はない

とりあえず今日も

月が綺麗だよ

Innocent Girl/無垢な子

Innocent Girl


My doll is fragile

And she easily collapses

As if a tiger bite

Her skin is ripped


She is free of blame

Just plays house

Even when stained

She keeps silent


So I fix her

with scotch tapes

And dress her

with new pretty clothes


She looks much better

You can play together again

With a bit unnatural smile

And perfectly hidden scars

 

---(以下、作者による日本語訳)---

無垢な子

 

私の人形は壊れやすい

すぐにバラバラになっちゃうし

まるで虎に噛まれたみたいな

ボロボロの肌

 

この子は何も悪くないのに

ただおままごとをして

汚れちゃった時だって

良い子にしてた

 

だからなおしてあげたの

簡単なテープで

あとはおめかしもしてあげた

新しい素敵なお洋服で

 

そしたらずっと良くなった

もう一度一緒に遊べるね

ちょっと笑顔はこわばって

傷は完全に隠れているけれど

 

Baby/ねぇ

Baby

 

Why you have so clear eyes

Shine as embracing sorrow

Looking into your eyes

I can find a deep hole

 

One day, pulled into your space

I fell onto the bottom

That was darker than shade

But a bit of light streamed from above

 

And inside I could see drops falling

At the same pace as your beat

Like a bell ringing to tell us that you are living

It shook my heart keenly

 

Just I wake up to the vibrating alarm

And I hope to congratulate you on surviving so far

 

---(以下、作者による日本語訳)---

ねぇ

 

あなたの瞳はどうしてそんなにきれいなの

かなしみを包みこむようにかがやいて

あなたの瞳をのぞきこんだら

暗くて深い穴があったの

 

ある日私はそこに落ちた

穴の底にしりもちをついて

そこは影よりも濃く暗かった

でも上から差し込むわずかな光

 

その中で私は見た、しずくが垂れていくのを

あなたの鼓動と同じリズムで一つずつ

まるで鐘の音が あなたの生きていること

教えてくれるようで私は ふるえた

 

ここで起きてしまったの ふるえる目覚ましで

そしてあなたがここまで生きてきたこと、おめでとう

すきかも、と

すきかも、と

 

すももを にぎる 

すりつぶす 歯で

すじが 間に残る

消化できぬ 思い

 

しみわたる 酸味

もどかしい 言葉

さいごに貴方の声

とおのいた 響き

 

しるをすくう 指

腕の血管 たどる

目で貴方の一挙手

スローモーション

 

もう二度と会えぬ

だから かじった

苦味が あざける

捨てた思いと記憶

思い出せぬ貴方達