お月見のうた/大山星
歩きながら夜空を見上げて
無邪気に「月が綺麗だね」って
言えなかった私たちへ
たぶんあれは確か
去年の今頃
少し肌寒くて
金木犀の香りをまとった空気が
鼻をくすぐる季節のある日
夜の街の明るさにも
まけないくらい輝いてた
言葉にするべきあの月を
たしかに一緒に見たのに
二人して黙ったあの数秒
あれから色々あって、
と言いたいところだけど
むしろ何もなくて
世界中の人々は
一定の距離を保つようになったけど
それがなかったとしてもきっと
律儀に引かれた線を超えないままのこの関係
私は他のこと考えてぼーっとして
君はそんな私見てとまどって
結局変わんない、今でも。
私は月を見たら
君を思い出すようになったけど
それくらいしか変化はない
とりあえず今日も
月が綺麗だよ